Spotify後,次の大型IPOヨーロッパの決済システム「Adyen」

2018.06.05

Posted by 木村大夢

KVPの木村です!

先日以下の記事が公開され目にした人も多いのではないでしょうか?
After Spotify, this is Europe’s next major tech IPO

“おー,Spotifyの次に来る大型IPO案件はヨーロッパのfintech企業なのか”

“あれ,この会社の決済システムをあのFacebookやNetflix,Uberも使っているの!?”

などなど思った事のある方が多いのではないでしょうか?

そんな今注目のヨーロッパ企業『Adyen(アディアン)』について調べてみました!

 

Adyenとは

2006年に設立されたオランダの決済システムを提供するスタートアップ,時価総額は23億ドルで欧州の中では8番目,フィンテック業界内では9番目に規模の大きなユニコーン企業です.創業者のPieter Does氏.同氏はthe Royal Bank of Scotland(現:world pay)が2004年買収したBitbitのCCO(Chief Commerce Officer)を担当していました.そしてAdyenは現在,World payの競合となっています.

 

Adyenのビジネス内容

国際決済システムのプラットフォームです.複数の決済方法からオンライン,モバイル,ポイントオブセールでの決済を企業が処理できるようにしています.

 出典:KVP制作

特徴としてはクライアントは以下のような複数の決済システムから選ぶことができ,支払い方法は以下のような方法が対応可能です.(この他にも250種類以上の決済方法と187種類の取引通貨に対応)対応できる決済手段の数は他の競合企業に比べ群を抜いており,一つの競合優位性となっています.

出典:出典:https://www.adyen.com/payment-methods

もう一つの特徴としては,ゲートウェイ,リスクアセスメント,支払工程システムを1つのプラットフォームとして簡単に処理することができるソリューションです.このプロセスの一気通貫がadyenの強みです.通常企業は支払いをゲートウェイ,リスクアセスメント,支払工程システムを別々に行わなければならない事がよくあります.それを1つにまとめる事により全プロセスのデータアクセスの可視化を実現する事ができています.この様な一気通貫のプロセスにより手数料を取る仲介的業者が少なくなり,クライアントのコスト削減に繋がっています.また,Adyenのアジア支店の社長であるWarren Hayashi氏はインタビューで「お客様が望んでいない事は,支払会社が介入し,自らをブランディングする事です.チェックアウトの工程で,私たちAdyenは見えなければ見えないほど,よりお客様の役に立つ事ができる.」と語っておりPayPalなどの様にクライアントとその顧客がその決済システムのブランド名を目にするということはAdyenの美学に反するという姿勢を示し,そう言った面でも競合との差になっていると考えています.

出典:https://www.adyen.com/blog/adyen-rolls-out-global-acquiring-in-brazil-hong-kong-and-australia

Adyenのサービス導入企業事例

出典:KVP制作

導入企業はNetflix, Facebook, Spotify, Etsy, Vodafone, Sephora, Tory Burch, L’Oréal, booking.comなどグローバルに展開する大企業を中心に5000社以上に導入されています.決済手段の多さや一気通貫の決済システムの優位性により,グローバルかつ大企業への導入が積極的に進んでいる現状です.

 

Adyenの資金調達実績

Adyenはこれまでに(2018年5月現在)2.66億ドル調達しています.企業価値は23億ドルです.

主な投資家はIconiq Capital, General Atlantic, Index Venturesです.

出典:KVP制作

Adyenの投資家概要

 出典:KVP制作

Index Ventures:  2011年8月に1600万ドル投資.

General Atlantic: 2014年12月に2.5億ドル投資.

Iconiq Capital:    2015年9月に金額非公開で投資.

 

投資家の投資先の企業とAnyenのクライアントになっている企業が重なる部分も多いので,VCが積極的に紹介したのかなと推測されます.シード期に資金を入れてもらうVCの重要性が垣間見えるデータとなっています.

 

今後のIPO予想とその規模の比較

2018年の6月に上場を予定しています.上場時の時価総額は70億ドル~105億ドルの予想,15%のシェアの放出予定です.直近ではSpotifyの上場が注目されましたが,その規模に近く大型IPO案件としてマーケットでは注目を集めています.

Adyenの2期分売上・当期純利益トランザクション

2017年の売上高は€218 million(2.5億ドル),昨年から38%増加しています.

2017年Q1の当期純利益は€24.1 million(2800万ドル),昨年から€10 million以上増加しています.

出典:KVP制作

Adyen競合分析

出典:KVP制作

上記に主要な決済プラットフォームを運営しているadyen, stripe, paypalの特徴を項目別にまとめてみました. またstripeとpaypalに関しては企業の買収経験があり,直近にもアクティブに行われていたので,そこに関してとM&A後の提携の仕方をまとめました.

 

Adyen競合の企業買収状況と次の戦略

 

PayPalの場合:

出典:KVP制作

Jetlore:カリフォルニアに拠点を置き,人工知能リテールシステムに特化しているスタートアップです. ①顧客データを分析し,ターゲットに合った製品情報を知らせる②顧客に合わせてプロダクトリストや検索結果を表示させるアルゴリズム. 上記の2つのサービスを展開しています. 今回の買収でどちらのサービスもマーケティング解析とABテストツールの一連製品であるPayPal マーケティングソリューションに加わる予定です.

iZettle:北欧やメキシコを含む12のマーケットで事業を展開する決済プラットフォームを運営するスタートアップです.今回の買収でPayPalの欧州での販路拡大の足掛かりとする予定です.

Swift Financial:米国のスモールビジネスに対してキャッシングや融資を提供する企業です. PayPalは自社のスモールビジネス向けに融資する事業Working Capitalの事業拡大の為に今回の買収に至った可能性があります.

 

PayPalの直近の買収先とのシナジーをみると,スモールビジネスでの存在感を出す為に機能の拡充と展開地域の拡大を優先的に行おうとしていると分析できました.

 

Stripeの場合:

出典:KVP制作

Index :カード番号を軸としたリアル店舗のCRM企業です. 店舗のCAT端末にビルトインする形でソフトウェアを入れて,カード番号をベースにPOS情報とつなげて,顧客分析,メールマーケティングを行います.Indexの技術により,これまでオンライン上のコマースのみに特化していたStripeがオフラインな店舗での導入を加速させる事ができるとの見方があります.

payable : 社員やフリーランスの給料の支払い時の際などの税金のやり取りをスムーズに行う事ができるプラットフォームを展開しています.Stripe Connectに税金(フリーランス特有の1099Contractsなど)のレポーティングを楽にする機能を実装するという意味合いでの買収との見方があります.

INDIE HACKERS:起業家の為のナレッジシェアコミュニティです.成功した起業家がオンラインサロンの様に自分の成功談を投稿し,その投稿を課金することによって閲覧できる様なサービス.Stripeとの連携により,コミュニティにいる起業家がStripeを利用する事ができ,将来のクライアントの囲い込みとしての意味合いがあるとの見方もあります.

 

Stripeの直近の買収先とのシナジーをみると,今までアプローチできていなかった領域(リアル店舗での導入)やこれまでの販路の機能拡充をしているのが見てとれ,今後のリアル店舗での展開の方向性はPayPalと真っ向から勝負することになるという分析ができました.今後は欧州のエンタープライズ向けの展開をする際にStripeがAdyenを買収するというシナリオも考えられると感じました.

コラム:PayPalとの関係性

出典:KVP制作

PayPalは2002年にebayに15億ドルに買収され,ebayの決済を担っていました.しかし,2015年に分社化を発表,2015年にはナスダックに再上場をしました(企業価値は520億ドル).その後2018年の2月にebayがPayPalとの支払いプロセスのシステムとしての利用を2020年を目処に契約を解消する事を発表しました.そして,その後のebayの支払いプロセスを担うのを任されたのがAdyenでした.切り替えの狙いとしては利用者の決済手段を増やし(Adyenは250以上の決済手段と連携),自由でスムーズな支払いの過程を作っていきたいという狙いがあるとのことです.そんな中でPayPalが欧州のSquareと称されるiZettleを22億ドルで買収(しかも全額現金で!!)することを発表しました.iZettleは2018年の5月の初めに上場申請をしており,その際の企業価値は約11億ドル,今回の買収金額はそれの2倍弱の金額となります.iZettleは現在はスマホやタブレットと接続するクレジットカードを読み取るドングルを活用して,店頭ビジネス分野で事業を進めています.しかし,iZettleは今後Eコマースや大企業の決済領域に参入するとの声明出したと2018年の4月の記事になっています.欧州でAdyen VS iZettleの構図が浮かび上がってきたようにこの一連の流れで感じました.

 

考察

今回は歴代最高時価総額で上場したSpotifyの次にくる大型IPO案件のヨーロッパの決済システムAdyenについて取り上げました.AydenのCEOの元々の会社bitbitはWorldpayに買収されました.そのWorldpayは今やAydenの競合となっています.現在決済手段は法定通貨に紐付くクレジットカードや国毎の通貨に限定されています(ごく僅かであるがbitcoinに対応しているところはあるが).今後は仮想通貨の決済システムをAdyenのようなスキームで行う企業が登場してくると思います.そしてAydenとworldpayの関係性などを見ていると,その企業を創業するのは今AydenやPayPal等で働いている人の可能性があるなと感じました.

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