資金調達総額約1716億円!クオリティ重視型新興メディアの3つの特徴とは?

2017.07.12

Posted by KVP_official

 

KVPインターンの木村です!

先日評価額57億ドル(約6350億円)4億5000万ドル(約500億円)の資金調達を行った(TechCrunchの記事参照)若者向けにメディアを展開するクオリティ重視型新興メディア「Vice Media」。そのサービス内容や変遷について、調べるとともに、クオリティ重視型新興メディアに共通する特徴とその発展の変遷を考察してみました!

若者向けメディアのViceが4億5000万ドル調達――上場も近い | TechCrunch Japan

「VICE Mediaとは」

VICEは1994年にカナダのモントリオールで創業され、現在、世界37ヶ国、1500名の従業員数を擁し、月間UU数2億5000万~3億と他を圧倒する勢いと存在感を放っています。(月間UU数:GIZMODE  760万人、ダイヤモンドオンライン 600万人、Lifehacker 580万人) 日本法人である「VICE Media Japan」は2012年に設立されました。

 

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<VICE Mediaの歴史>

KVP作成

 

1994年、シェインスミスを含む3名がカナダのモントリオールで「Voice of Montreal」を創刊。内容はパンクやドラッグなどでした。(1996年にViceに改名)

 

2000年半ばに複数のメディアを立ち上げマルチメディアとしての道を歩みます。2006年には動画メディアにも進出をし、現在では世界中で制作・厳選されたプレミアムなエッジーコンテンツを日々5000万人以上の人々に提供しています。

 

2016年12月にはVICEグループ初の定額制動画オンデマンド配信サービスを世界に先駆けてVICE Japanで配信を開始。配信されるコンテンツはエミー賞を受賞したオリジナルドキュメンタリーシリーズ「VICE on HBO」など。

 

<主な事業内容>

若者向けに特化したメディアを運営

 

[Digital channels]

News等のジャーナリズム系から、Music、Fashionなどのポップカルチャーを含む、10以上のメディアを運営。

 


Broadly.
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女性向けメディア、「Politics,Culture,Opinion,Sex, Drug,Occult」などのジャンルのオリジナル記事を配信しています。ここでも、ストーリー性の溢れるドキュメンタリーなどを発信。「テキサス州で女性の中絶権利」に関する記事や「デートドラッグ」に関する記事などターゲット層は1980~2000年頃に生まれた若者(ミレニアル世代)を対象としています。

 

[定額制動画配信サービス]

VICE PLUS

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定額制の映像配信サービス、月額799円

エミー賞を獲得したドキュメンタリーシリーズ「VICE on HBO」や、イラクで唯一のヘビメタバンドを追いかけたドキュメンタリー「Heavy Metal in Baghdad」などが配信されています。

特徴としては、2つ。

1つ目は「VICE独自の基準で選び抜いた映像作品のみを提供するセレクトショップ的特性

他の定額制の映像配信サービスのNetflixやAmazon Videoなどは数千、数万本の映画やドラマが見放題というのが売りである中、(最近はオリジナルのコンテンツも増えてきているが)VICE PLUSの場合、本数だけで言えば極端に少ない(実際に「WAR」というカテゴリーでは6本しか動画がない)。しかし、それ以上にどの映像も癖の強いものがぎゅっと詰まっており、VICEのブレない世界観を堪能することができます。


2つ目は「エッジの効いたドキュメンタリー番組としての要素

VICEは実際にそこに行ってみるという突撃型の取材スタイルから出来上がるクオリティーの高く、見所満載の作品(北朝鮮からの脱北者の逃亡ルートとの密着や、タリバンの少年自爆兵に取材した作品など)で競合と差別化を図っています。

 

[テレビ放送]

VICELAND

2016年初頭に、VICE Mediaがテレビ局のA+Eネットワークが保有するチャンネルを「VICELAND」と改名し、運営を開始しました。ここでは、「広告と番組コンテンツの両方を製作する」という新しいビジネスモデルを展開しています。CMに関して、VICEのコンテンツ・マーケティング・スタジオでCMを制作でき、最大で「全てのCM枠」を購入することができるような自由を広告主に提供しています。(AdvertisingAgeより)

 

 

<Vice Mediaの特徴>

Vice Mediaの特徴は、危険を顧みない「圧倒的な取材力」。

例えば、ウクライナ、シリアからの現地レポートは大きな反響を呼びました。
他には、コカイン職人への密着取材。道中は場所を特定されないようにするために、記者に目隠しをして現地まで向かったこともあったそうです。さらには、NHKがやっているような戦地にジャーナリストが赴いて取材をすることがあり、トルコ政府に身柄を3ヶ月ほど拘束されることもあるそうです。

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そうした毎日5000以上配信されるディープな記事の内容が1980〜2000年生まれの若者から、絶大な支持を得ており、グローバルの月間UVは1億以上に達しています。

 

<VICE Mediaの収益モデルは?>

VICE Mediaの収益モデルは主に2つ。

1つ目は自らのコンテンツを売る「ライセンシング」。

2つ目は「広告・スポンサー収入」傘下の「Virtue」がネイティブ動画の作成。

2014年の推定時価総額は25億ドル。売上高は10億ドル、営業利益率は30%~35%。

 

<直近5年の資金調達状況>

KVP作成

直近5年で14.2億ドル(約1700億円)の調達。ディズニーを始めとするメディア系からの投資が中心。今年にはペンチャーキャピタルから4億5000万ドル(約500億円)の投資を受けました。今回の投資を受け、創業者兼CEOのシェーン・スミスはCNBCのインタビューに対し、「TPGからの資金調達はIPOを助けるだろう」と発言して、IPOに対する意欲を見せました。今回のTPGからの4億5000万ドルの資金調達からIPOに向けて更なる売上拡大のためのコンテンツとインフラへの投資に充てるとみられます。

 

 

「クオリティ重視型新興メディアの特徴とは?」

 

 

 

マネタイズが広告収入のためPV至上主義に陥り、日本でも大きな話題となったバイラルニュース型メディア。広告主のための記事を書くのではなく、読者により質の高いものを提供するために生まれたのが近年台頭してきている「クオリティ重視型新興メディア」。広告モデル以外のビジネスモデルを確立させ、読み応えのある質の高い、読者のための記事を提供しています。先に紹介した、ViceMediaは圧倒的な取材力を強みに、ユーザーを虜にし、急成長しています。
今回は、そんな独自の強みを発揮し、成長を続ける新興メディア4社を挙げ、その特徴についてまとめていきます。

 

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<3つのクオリティ重視型新興メディアのサマリー>

Narratively

2012年に5万ドル以上の資金をクラウドファンディングから集め、設立されたアメリカの新興メディア。
1つ1つの記事の量を長文し、コンテンツの充実を優先しています。 1週間に1テーマを揚げ、1日に良質で長い分量の記事を1つずつ配信するスタイル。

 

DeCorrespondent

2013年に1.7億円以上をクラウドファンディングで集め、オランダで設立された新興メディア。ユーザー課金型のコンテンツに関わらず、5万2千人もの会員がいます。(NewsPicksは有料会員数3万人を突破したニュースが報じられていたが、人口約1700万人のオランダで5万2千人もの有料会員数を獲得してることの意味合いは大きいと思われる)

 

Axios

2017年1月に設立され、購読料が年間1万ドル(約120万円)で話題となったアメリカの新興メディア。アメリカの政治メディア「ポリティコ」の共同創業者であるジム・ハンデヘイ氏がベンチャーキャピタルから約1000万ドル(約12億円)の資金調達を行い立ち上げました。

 

クオリティ重視型新興メディアの3つの特徴

①圧倒的コンテンツの質(長文の記事しかないメディア、ディープな取材をするメディア)

 

VICE MEDIA

北朝鮮や、戦争地域など、通常のメディアが立ち入らないような場所までいき、取材をしています。

 

Axios

取材陣は、バンデハイ氏をはじめとした元ポリティコの人材や、ウォール・ストリート・ジャーナル出身者など、腕利きの記者たちを擁しています。経営陣にもオバマ政権時代の国務省幹部や、共和党指導部の元側近など、強力な人脈のあるメンバー。

 

De Correspondent

1日に配信される記事は約5本に絞り、厳選された記者たちそれぞれの興味関心や専門分野に基づいた深く掘り下げられた記事を配信。

 

Narratively

1週間に1テーマを扱い、1日1つのストーリーを深く掘り下げた長文記事や動画記事を配信。多くのメディアでは記者が各地に足を運んで取材をしている一方、Narrativelyはすでに現地にいる人に書いてもらう形式をとっています。

 

②マネタイズの多様化(ユーザー課金型、別途コンテンツ制作等からのマネタイズ)

 

VICE MEDIA

VIRTUEというコンテンツ制作に特化した事業を運営し、AudiMercedes-Benzなどのコンテンツを制作受託や動画素材販売からのライセンス収入映画などからマネタイズ。

 

Narratively

アマゾンやゼネラル・エレクトリック(GE)といった大きな企業から非営利団体までをクライアントとし、ストーリーコンテンツ制作などからマネタイズ。

 

Axios

年間1万ドル(114万円)のユーザー課金モデル、広告収入などからマネタイズ。

 

De Correspondent

年間80ドルのユーザー課金モデルなどからマネタイズ。

 

③読者の読みやすさを重視したコンテンツ・UIUX

 

Axios

短く・シェアをしやすいニュース

-情報に溢れ、長い文章を最後まで読まない読者に配慮をしました。

 

De Correspondent

読者が記事の内容に集中することができるように、たとえば、多様な年代・視覚特性・デバイスに対応できるよう、文字の大きさ・背景色・フォントを読者自身が変更できる機能を搭載。

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読者が最後まで記事に集中して読めるように、関連ページをつなげるハイパーリンクは本文から排除、記事右端の空きスペースに概要・注釈付きで配置。

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「インフォカード」と呼ばれる、ページ遷移が起こらない折りたたみ式の補足説明ブロックを開発。登場人物のプロフィールや用語解説など、前提理解のために必要となるような基礎知識を確認できるようにしています。

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以上のように、PV数稼ぎによる広告収入に頼り、偏りのある記事を書くのではなく、ユーザー課金やコンテンツ作成などのマネタイズモデルからメディアを運営する企業が増えてきています。こうしたメディアを立ち上げている創業者の多くは、もともと巨大なメディア企業で働いていた人が多かったです。
最近ではメディア以外でも、動画配信サービス大手のNetflixがオリジナルコンテンツ拡充のためのさらに1200億円を投入するという発表があり、お金を払ってでもより良いコンテンツを求める顧客が増えているように感じました。そこで、増加する課金志向型ユーザーの増加の変遷を考えてみました。

 

 

「増加するユーザー課金モデルメディア、その変遷とは?」

以前は、無料で読めるということで発展していったWebメディア、日本ではまだまだキュレーション型のメディアが人気な裏で、世界では有料課金型のメディアにお金を払う人が増えてきています。どの段階でそういった流れができたのか、考察しました。

 

<年々、消費者の記事をお金をかけてまで見たいという傾向が強まっている>

近年、世界的に見ると、記者自身がより深い内容のコンテンツを作成するため、クラウドファンディングを利用する傾向が年々増加しており、各クラウドファンディングサイトでも「journalism」いうカテゴリーが目立つようになりました。以下はアメリカの大手クラウドファンディング会社「Kickstarter」のjournalismのカテゴリでの応募の件数の推移です。

 

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このように、年々増加傾向にあり、2015年には取引総額が$2.0millionに迫る勢いでした。

 

「終わりに」

上記のような傾向から、2009年辺りから、徐々に読者側の意識としてお金を払っても読み応えのある記事を求める傾向が高まり、個人で行なっていたものが組織化されていき、メディアへのメンバーシップ制による課金形態が受け入れられるようになったのではないかと考えました。日本でもNewsPicksなどが月額課金のサービスの登録人数3万人を突破したというニュースがあり、そうした有料コンテンツの増加傾向にあります。日本でもコンテンツを重視したいというユーザーのニーズが高まり、同様の傾向が現れると思います。ベンチャーでも取材力にこだわり、コンテンツを形成することで大手メディアに負けない戦い方ができるのではないかと考えています。

 

 

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